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 しとしとと長雨が降りしきっている。  六月を前に早くも東京は梅雨入りをしていた。  じっとりと肌にまとわりつく湿った空気が疲れた身に辛い。  新しい現場は入ったばかりの契約社員を早くも殺しにかかっている。今日も今日とて終電帰りを余儀なくされた。  傘を差して、家までの道のりを歩く。  ロータリー前のファミレスは早くも店じまいを始めていた。  駅から一本路地を入ればカラオケもネットカフェもない、閑静な住宅街が続く。  途中のコンビニで菓子パンばかり五個も買う。  仕事上がりは無性に甘いものが食べたくなる。  歩いて五分ほどで、アパートに着いた。  木造二階建てのボロアパートは家賃の安さくらいしか取り柄がない。隣のテレビの音は余さず聞こえるし、二階の廊下を誰かが歩くとぐらぐらと揺れる。大きな地震が来た日には、きっと積み木の家のように、横にパタリと倒れるに違いない。  階段下のポストに突っ込まれたダイレクトメールと郵便物の束を引き出して、中身を確認しながら二階に上がる。  階段上の電灯が点滅していた。  先週、廊下奥の電灯を換えてもらったばかりだというのに。     
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