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 道沿いに並び立つ背の高い木の向こうに、見渡す限り新緑の地平が広がっていた。  札幌で借りた格安レンタカーは見た目通りのボロさで、カーステレオもエアコンも壊れて動かなかった。  ならばいっそと全ての窓を開け放って、風を切って走ることにした。  暦の上ではもう春に違いない。北の大地に吹く風はまだ少し冷たかったが、どうせ文句を言う同乗者もいない気ままな一人旅だ。コートを着込んでマフラーでもしっかり巻いておけばどうということもない。時折、歯の根が咬み合わなくなるが、小刻みに膝でも揺らしていればそのうち温まる。  道のりはいたって順調だ。  旅に出よう。  そう思い立ったのはつい先日のことだ。  動機は実に明快で、テレビで見たタンチョウの真っ白な羽、黒い瞳、鮮やかな紅色の横顔に魅入られて、その日の晩には北海道行きの格安航空券を予約していた。  ちょうど仕事が一段落して、前の現場との契約が切れたのもある。どうせ使い潰されるだけのしがない契約社員だ。現場の合間にゆっくりと羽を伸ばすのもいいだろう。  タンチョウだけに。     
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