横断歩道のロボット

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 ロボットは機械だ。  人によって作られ、人のために働く。作られた通りに、定められた通りに、正しく、理想通りに。休むこともなく、迷うこともなく、躊躇うこともしない。  では、正しさとは。  ロボットに課せられた理想とは誰のためのものであったか。あのロボットの向こうに、私は、私たちは一体、何を見たのか。  ロボットの存在は日常の中にありふれている。  駅の自動改札や街中の自動販売機は、最も原始的なロボットだ。もっと高性能で、高機能なロボットも、巷にはあふれている。美術館の展示フロアには解説用のロボットが大抵二、三体は置かれているし、デパートの案内係も今やほとんどがロボットだ。街角の交番にさえロボットがいる。高度なAIを持ち、人間と同じくらい流暢に話し、適確に答えを返す。しかし、これらのロボットが正しく動くのを見て、私は苛立ちを覚えたことなどない。ましてや、誰かに突き飛ばされたり、何かで殴りつけられて腕をへし折られたりなど、そんな話は寡聞にして知らない。  それらのロボットと、あの横断歩道に立つロボットは、何が違ったのだろうか。あのロボットはどうして傷つけられねばならなかったのか。     
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