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 I教授の説明をT氏は上の空で聞き流していた。意識はすでにモニターの上に並べられた画像――女性たちの写真に釘付けになっていた。  T氏はこれまで仕事一筋に生きてきた。  幼少の頃、ぼんやりと思い描いていた夢は、大学を卒業する頃に具体的な目標となった。社会の荒波に乗り出でて、挫折も数多く経験はしたが、幸いにして夢の多くは叶った。そうして気付けば、もうじき五十に手が届く歳になっていた。今では一線を退き、後進を育てる立場にある。  ここまでの半生を後悔してはいない。  しかし、ふとした折に、寂しさが身にしみるのも、また事実だった。  T氏は独り身だった。  結婚して温かな家庭を築きたい、その想いは日増しに募っていた。  しかし、人生の全てを仕事と夢の実現に費やしてきた彼にとって、それは難題であった。身の回りにそれらしい相手など一人もおらず、今から必死になって探したところで、良い相手が見つかるとも到底思えないし、何より気恥ずかしかった。  そこに差し伸べられた救いの手こそ、タイムリープマシンだった。  これならば、過去に戻って別の人生を選ぶことも、起こりうる未来の可能性の中から理想のものを選ぶこともできる。  そこでT氏はI教授にひとつの調査を依頼した。     
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