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今日まで築き上げた人生の先に理想の家庭を築いているような、そんな未来はないだろうか。欲深いのは重々承知だったが、どちらも手にできるのならばそれに越したことはない。
さいわいにして、タイムリープマシンの機能を使えばそれも可能だという。
「――つまり、この宇宙はエネルギー的重ねあわせ状態のひとつにすぎません。時間的空間的に、あらゆる可能性宇宙が常に並存しています。旧来、それらはいわば全にして一、不可分であると同時に完全に独立した不干渉のものであると考えられていました。しかし、今回、私たちの研究室では、可能性宇宙の観測と干渉に成功したのです。人類史に名を残す発見と発明は多々あれど、これこそが史上最高と言っても過言ではありません」
興奮気味に語り続けるI教授に、T氏は曖昧な相づちを打っている。視線は食い入るようにモニタの写真を眺めていた。
写真は何の変哲もない日常の一コマを切り取ったようなものだが、女性の顔と容姿がよく分かるようになっている。写真の隣には、その女性のおおまかな経歴と性格的特徴、家庭の経済状況、今から何年後の未来か、などがレポートとして添え記されている。
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