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本当は、今日だって仕事のはずだった。カレンダー通りの職場で、休日出勤に残業も多かった。けれどこの1ヶ月ほど、仕事を休まざるをえなくなった。正確には、出勤できなくなったのだ。 1か月前の朝。急に動かなくなった身体はまるで自分のものとは思えず、ちゃんと寝たはずの頭は一向に覚醒してくれず、無断欠勤をしたのがはじめだった。 なにが起こっているのか、まったく分からなかった。ただ、翌日職場に連絡をすると、はじめは前日の無断欠勤について怒鳴り散らしていた上司が、俺の曇った声を聞いているうちに様子をかえて、病院に行ってこいと言ったのだった。 病院。この場合は、内科でいいのか?脳神経外科?そんな疑問をよそに、友人に相談したところ、 「精神科か心療内科じゃねぇか?」 そんな言葉が投げ掛けられた。 精神科…そんなところに自分が世話になる日が来るなんて、一瞬たりとも考えたことがなかった。だって、あそこは頭がおかしいやつがいくところで、弱いやつがいくところ。そんな風に思っていたからだ。 「精神科…?」 「とりあえず病院に行った証明さえあれば、仕事を休むのにも罪悪感は減るだろ」 たしかにその通りだ。原因不明の体調不良で休みます、なんてそんなことを言って、誰が信じるのだろう。罪悪感が彼に押し寄せていた。その友人の言葉に半ばむりやり背中を押されて、病院へ行くことを決めたのだった。 能面のような顔をした白髪交じりの医者は、神妙な面持ちで耕太の状況を聞いていた。質問されるたびに、ゆっくりと考えながら、実際あまり回らない脳みそを使って答えていく。
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