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「最近、感動したことや嬉しかったことは?」 「感動…ないですね。仕事が忙しくて…最近グループの主任を任されるようになって、それにやり甲斐を感じていた…ような気がします。仕事は嫌いじゃなかったので」 ぽつぽつと繰り返す。 仕事は好きだった。やり甲斐を感じていた。頼られるのが心地良かった。その言葉たちは、なぜか繰り返すたびに呪文のように聞こえた。 「まずはお薬で様子を見てみましょう。食事と睡眠はしっかりとるようにね」 仕事に行けなくなっているからにはと診断書を頼んだが、初回でいきなりというのもねぇ、と渋る医者に一瞬苛立ちを覚える。代わりに、すこし早いけれど、と付け加えた上で一週間後にまた来るようにと言われて病院を出た。 会社にはなんと言えばいいのだろうか。考えても考えても、なぜか回らない頭は答えを導き出してはくれなかった。 食事と睡眠はしっかり取るように、そう言われたことを思い出す。 昨日は最後に何を食べたっけ?そう考えるが、思い出せないことに驚いた。今日はまだなにも食べていないし、作る気にもならない。実際、お腹も空いてはいないのだが、言われた通りなにか食べておこうとコンビニで適当なものを選んで家に帰った。 仕事を休む罪悪感が、日に日に自分を押しつぶしていく。それはどんどん確実に、心を蝕んでいった。 有休消化ということにしてもらって過ごした一週間は、ひどく長く感じた。それでいて、ほとんど寝たきりで過ごす日々は時間がすこしも流れていないんじゃないかと思うくらい変わらない毎日だった。いつの間にか一週間を終えたとき、自分はちゃんと生きているのか分からなくなっていた。寝過ぎて痛む腰と、締め付けられるような頭痛だけが、まだ生きているのだと実感させたのだった。 診察予約をした日がやってきた。ちゃんと時間も把握していたのに、気付くと時間はどんどん過ぎていて、結局電話を一本入れて病院に行けたのは予約してあった午前ではなく、午後の診療になってしまった。
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