01 青の目

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 ダグラスはおじいちゃんのお葬式に参列していた。  緑の芝生の上にベンチが並べられ、神父さんがお説教をたれている。大人たちの中には涙ぐんでいる人もちらほらいたけれど、おじいちゃんは五十代のときに死の病を宣告されて、そのあと奇跡的な回復を遂げ、みんながびっくりするくらい長生きして人生の幕を閉じたものだから、ほとんどの人は、やっとくたばったか、大往生だな、なんて冗談交じりに話していた。ダグラスにしたって、年に一度しか会わないおじいちゃんとの思い出なんてほとんどない。あくびをかみ殺して、ひまつぶしに妹の髪の毛を引っ張ったりしてお葬式をやり過ごした。  妹の反応にも飽きてきて、つまらなそうに視線を泳がせたダグラスは、墓地の向こう側から、誰かがこっちを見ているのに気がついた。  十歳くらいだろうか。ならダグラスと同じくらいだ。男の子がひとり、木に寄りかかってぼんやりとお葬式の様子を見ていた。色あせたブルージーンズに薄緑色のセーター、その下から黒いシャツがはみ出ている。まとまっていない髪の毛はうすい茶色で、ダグラスと同じ。その横には、十歳が扱うには大きすぎるシャベルが木に立てかけられている。ダグラスは少年と目があったような気がしたが、距離もあるし、よくわからなかった。  おじいちゃんの入った棺が埋められて、神父さんがアーメンと言って、集まっていた人たちが、歩いてすぐのおじいちゃんの家に場所を変えようとしていた。お菓子をつまみながら、故人の武勇伝やら生い立ちやらを語り合うんだ。ダグラスはげんなりした。つまらない大人のつまらない昔話ほど、つまらないものはない。 「おい、アシュリー」  ダグラスが妹のブロンドの髪を引っ張ると、茶色の目がにらみ返した。ブロンドなのに茶色の目なんて、ほんとについてない。ダグラスにいつもその事でからかわれるので、アシュリーはダグラスが嫌いだった。だけど、仕方ない。二つ離れたかわいい妹には、意地悪したくなるのが兄ってものだ。 「何よ」 「おれ、ちょっと遊んでくるから。ママには上手くごまかしといて」 「どこ行くの、こんな知らない町で」 「ばーか」  ダグラスは黒いネクタイを外して、ぶんぶんふりまわしながら昼間の墓場を歩いていく。さっき、木に寄りかかっていた少年が、墓石の前に立っていた。
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