0人が本棚に入れています
本棚に追加
髪の毛は寝ぐせだらけで、目はぎょろりとでかい。どことなく陰気な奴だ。大きなシャベルの柄にあごを乗せて、墓石の文言を読んでいる。
ダグラスは少年のすぐ横に立ち、墓の名前を見つめて「知ってる人?」と尋ねた。少年は、おや、とダグラスに目を向けて、首をふった。
「全然知らない人」
「ふうん。じゃ、なんで見てるの」
「興味があって」
少年はシャベルを持ち上げると、軽々と自分の肩に乗せ、ダグラスの喪服を見て目を輝かせた。
「君、さっきの葬式に出たんだ? 誰が死んだの?」
「おれのじいちゃん」
「なーんだ」
少年はがっかりした顔をして、シャベルをざくっと地面に突き刺した。ダグラスは特に気にとめず、社交的に言った。
「おれ、ダグラス」
「スコップ」
「なんだそれ。ニックネーム?」
「そんなものかな」
「ほんとはなんていうの」
「さあ、忘れちゃった」
なんだか変な奴だな、とダグラスは思ったけれど、薬臭いおじいちゃんの家に帰るのも気が進まないので、きょろきょろと辺りを見回して、ベンチを見つけた。
「座ろうぜ」
「なんでさ」
「暇つぶし」
ダグラスはもう先を歩きはじめた。スコップはシャベルを引き抜いて、何も言わずについてくる。
ダグラスは学校で一番の人気者だった。かけっこもスポーツも一番だったし、着ている服も髪型もみんなにうらやましがられてまねされた。学校で一番かわいい女の子はダグラスとおしゃべりしたがったし、学校の子たちは、ダグラスに「よお!」と声をかけられると、特別な人間になれたような気がした。
学校から遠く離れたおじいちゃんの地元でだって、ダグラスは自分の価値をこれっぽっちも疑わなかった。ダグラスは、自分に声をかけてもらえて、スコップはどれほど幸運なのかをわかっていないんだろうな、と哀れに思った。
スコップはなんにも知らない奴だった。テレビのコメディアンも、アメコミの映画スターも、ゲームの話でさえ、まるでついてこられない。やばいぜそれ、とダグラスはダメ出しした。ポケットからゲーム機を引っ張り出して、電源を入れる。スコップが興味津々で「それ、ゲームボーイってやつ?」と聞いてくる。
「ゲームボーイって、いつの時代だよ。ほら、これ、おれのいちおしのゾンビゲーム。ちょっとやってみろよ」
簡単にボタンの説明をして、スコップに押し付ける。
最初のコメントを投稿しよう!