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スコップはあわあわしながらも、次々と襲いくるゾンビたちを倒すべく、ボタンを連打した。だけど簡単に追い詰められて、ゲームオーバー。
「これ、ゾンビだよね」
スコップはどうも納得できないという顔をして、ダグラスにゲーム機をつき返した。
「なんでゾンビを殺すのさ? もう死んでるのに」
「死んでるのにおそってくるから怖いんだろ」
「怖いなら、なんで殺すの? よけい怒るだけじゃないか。かわいそうだよ」
こいつ、ちょっと面倒くさいな、とダグラスは思った。だけど他のゲームを教えると、今度は夢中になって遊び始めた。ちょろい。
気がつくと、空はすっかり暗くなっていた。スコップがシャベルをかついでダグラスをふりかえる。
「君はこのへんに住んでるの?」
「いや、じいちゃんのお葬式に出るから飛行機で来たんだ。でもあと二、三日はいるよ」
「それは良かった」
スコップはにこっと笑った。
「おれ、放課後はだいたいここにいるんだ。また明日」
「おう、じゃあな」
そう言って、二人は別れた。ダグラスは家路をたどりながら、変な奴、とつぶやいた。
「お兄ちゃん、あたしのお人形の目、取っちゃったでしょう」
朝、おじいちゃん家のキッチンで、アシュリーがダグラスをにらんだ。
白いタイル張りの床はきれいにみがきこまれ、トースターやフライパンは美しく並んでいる。自宅療養をしていたおじいちゃんは、死ぬぎりぎり前まできれい好きだったらしい。ママは隣の部屋で、おじさんやおばさんたちと、話し合いという名の怒鳴り合いをしていた。ダグラスは口いっぱいにコーンフレークをほおばりながら、「目?」と眉を寄せた。
「ああ、ボタンか。だって引っかかっちまってさ」
「もう、どこへやったのよ! ママにつけてもらいたかったのに!」
「うるさいなあ、捨てちゃったよ。いいじゃん、どうせ茶色の目だったし。ママに青いボタン買ってもらえよ」
「ひどい! あたしの目の色を馬鹿にしてるんでしょ!」
「ひどいぜ。こんなに妹思いの兄貴をつかまえて」
「じゃあ、ボタン弁償してよね! でないと、あとでママに言いつけてやるから!」
ダグラスは無視をすることにした。牛乳を一気に飲み干して、「いってきまーす!」と外へかけ出す。
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