01 青の目

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 スコップはあわあわしながらも、次々と襲いくるゾンビたちを倒すべく、ボタンを連打した。だけど簡単に追い詰められて、ゲームオーバー。 「これ、ゾンビだよね」  スコップはどうも納得できないという顔をして、ダグラスにゲーム機をつき返した。 「なんでゾンビを殺すのさ? もう死んでるのに」 「死んでるのにおそってくるから怖いんだろ」 「怖いなら、なんで殺すの? よけい怒るだけじゃないか。かわいそうだよ」  こいつ、ちょっと面倒くさいな、とダグラスは思った。だけど他のゲームを教えると、今度は夢中になって遊び始めた。ちょろい。  気がつくと、空はすっかり暗くなっていた。スコップがシャベルをかついでダグラスをふりかえる。 「君はこのへんに住んでるの?」 「いや、じいちゃんのお葬式に出るから飛行機で来たんだ。でもあと二、三日はいるよ」 「それは良かった」  スコップはにこっと笑った。 「おれ、放課後はだいたいここにいるんだ。また明日」 「おう、じゃあな」  そう言って、二人は別れた。ダグラスは家路をたどりながら、変な奴、とつぶやいた。 「お兄ちゃん、あたしのお人形の目、取っちゃったでしょう」  朝、おじいちゃん家のキッチンで、アシュリーがダグラスをにらんだ。  白いタイル張りの床はきれいにみがきこまれ、トースターやフライパンは美しく並んでいる。自宅療養をしていたおじいちゃんは、死ぬぎりぎり前まできれい好きだったらしい。ママは隣の部屋で、おじさんやおばさんたちと、話し合いという名の怒鳴り合いをしていた。ダグラスは口いっぱいにコーンフレークをほおばりながら、「目?」と眉を寄せた。 「ああ、ボタンか。だって引っかかっちまってさ」 「もう、どこへやったのよ! ママにつけてもらいたかったのに!」 「うるさいなあ、捨てちゃったよ。いいじゃん、どうせ茶色の目だったし。ママに青いボタン買ってもらえよ」 「ひどい! あたしの目の色を馬鹿にしてるんでしょ!」 「ひどいぜ。こんなに妹思いの兄貴をつかまえて」 「じゃあ、ボタン弁償してよね! でないと、あとでママに言いつけてやるから!」  ダグラスは無視をすることにした。牛乳を一気に飲み干して、「いってきまーす!」と外へかけ出す。
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