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ALSICH KANN
科学が発展して幾星霜。
人類はAIに仕事を奪われきらずに、換言すれば未だに雇用を完全には失わずに済んでいる。
このデータは最近になって実用段階になった『過去にデータを送る技術』を応用している。
損傷せずに目的のもとに届くことを、切に願ってやまない。
この行為が歴史上極めて重要なことは、私は重々承知している。
歴史を変えかねないことをしている自覚がある。
しかしながら、この行為をここで止めることはあまりに無責任だ。
私は私の可能な限りのことをしようと思う。
まず最初に、先の表記の仕方は、状況を説明するにあたりふさわしくなかった。
より正確に説明すれば、雇用を失わないように、世界が不文律の内にコントロールしていた結果が、今も形を成していると言えるだろ。
人口の爆発的増加を発端に、人類は様々な問題に直面してしまった。
食糧危機、エネルギー問題、土地問題etc.
食糧は宇宙で植物を栽培することに成功し、量産に漕ぎ着けた。
エネルギーは自然エネルギーの変換効率をあげ、どうにかなった。
土地問題は・・・この話はあとにしよう。
しかし、一番の問題は雇用問題であった。
衰退していく一部を除く各国家は、皆一様に頭を悩ませることとなった。
当然と言えば当然の話で、科学技術の発達が加速度的に進むのに対して、経済システムは未だに19世紀につくられた資本主義にしがみ付いていたからであった。
分かりやすく説明してしまえば、労働の需要という決まったキャパシティーの中に納まりきらないだけの人口問題を抱えてしまったのである。
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