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ここは北海道のある小さな町。雲ひとつない見事な秋晴れの下に大勢の歓声やバーベキューの煙、さらには迷子アナウンスや威勢のいい売り子の声が辺りに溢れている。いつもと違い賑やかな様相を呈していた。そう、何故なら今日は年に一度の「大漁祭」なる町を挙げてのお祭の日だから。
駐車場はほぼ満杯。会場の一角では臨時の即売所にて海・山の幸、スイーツの販売。奥の広場ではステージ上でカラオケ大会が開催されているらしく、聞こえてくる歌声は某国営放送の評価でいうなら鐘一つと思わしき素晴らしい美声が流れていた。
そんな喧騒の中で私は生牡蠣と焼牡蠣を猛烈な勢いで頬張っていた。
「いや、○○産の牡蠣は本当に美味しいですね!」
と満面の笑みを浮かべ鼻歌を今にもお披露目するのではないかという程に上機嫌な自分。屋外バーベキューコーナーの一角に陣取った私達。目の前には生牡蠣、焼き牡蠣、帆立に鮭のちゃんちゃん焼き、焼き野菜と食べるのに急がしいったらありゃしない訳だ。
本当、人間はなぜ口と胃袋が1つづつしかないのであろうか。胃袋は人より少々大きいようなのでこの際目をつぶるとしても口がいかんせん追いつかない。牡蠣を日本酒を飲む口と相席のご夫妻と楽しく談笑する口。最低でも2つの口が欲しいよね、本当に。そんなことを考えながら箸と口を動かしていたら場内アナウンスが聞こえてきた。
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