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「本日は○○町大漁祭にお越しいただき誠にありがとうございます。ただ今、14時開始の鮭ダービーの競技者を募集いたしております。小学生以上の方でしたらどなたでも参加が可能です。現在、若干の枠ではございますが競技者を募集しておりますので皆様の参加をお待ち申し上げます」
場内アナウンスは周囲の楽しそうなざわめきや炭火の爆ぜる音などにかき消されてしまったのか、誰も聞いていないかのごとく会場になんら変化はなかった。
私も流し聞き程度ではあったが「鮭ダービー」なる単語。ハテ、これは何のことだと思い、牡蠣の殻を片手に「今、アナウンスで言ってた鮭ダービーってなに?」と仲間に尋ねてみるも誰も知らない。そりゃそうか。何故なら今日のメンバーはバックパッカーの宿で知り合った一人旅の人たちの集まりだ。だから今一緒にバーベキューを囲むメンバーは全員旅行者でこの地の祭は初めての参加なのである。ましてすでにほぼ出来上がっている酔っ払い多数。どうやら聞く相手を間違ったようだと気がついた。
私は少し考えた末、少々席を外す事にした。
一人で向かうは鮭ダービーの受付。しかし受付と書いた紙が貼ってある会議用テーブルには誰もいない。しかたなく受付に背を向け何か作業をしている男性。多分関係者であろう。長靴をはいていたし。当たりをつけて「すみません」と声をかけると即座に振り向く男性。その勢いで「あの・・・鮭ダービーの参加を検討したいのですが、鮭ダービーって何ですか」と少し酒の入った勢いで聞いてみた。するとあまりに予想外の返答が返って来たのである。
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