鮭ダービー

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「ああ、これから10分後にレースが開始されるんですよ。で、ですね、実は急なキャンセルが出まして。よければこれからすぐのレースに参加してみませんか」 「・・・・・・」 は、はい? ええと、貴方様は一体何を仰ってるのでしょうか? あまりの急なスカウトに頭は追いつかず目食らう。そもそも「鮭ダービーとはなんですか」と尋ねただけである。それなのに10分後のレースに参戦のお誘いとは驚いた。 第一、心の準備ってのが全く出来てない。そして何をやるかもまるで分らない。せめて次のレースの参加ならまだしもだ。そのように伝えようとした矢先、男性は何を勘違いしたのか 「あ、Aさん。この人参加するって言ってるからキャンセル枠にこの人入れてね。」 『・・・・・・・・○×△、m35q、l;tmcg!?』と私の頭の中は大パニックだ。しかしそんな私にお構いなく私をスカウトした男性は足早にその場を立ち去り・・・。 ただただ呆然と立ちすくむ自分。そもそも一言も参加表明をした覚えがない。第一、どこをどうすれば今の会話から参加という話になるのかが全く解らない。取り急ぎ参加意思の誤解を解くべく説明をしようとするも場を任されたAさんは会場の一角を指で差しながら「まもなく説明の時間になります。あちらへ移動してください。私は先に行ってますので」と私にさらりと言い放ち足早にその場を立ち去った。 声を出すことすら忘れその場に直立不動者1名。
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