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おばさんは明らかにショックを受けている。
彼女にとって康宏はずっと素直な子供のままなのだ。
彼が本当は腹黒くてドエロいことなど、想像すらしていないだろう。
もしかしたら未だに童貞だと思っているかもしれない。
いや、その可能性は高い。
そんな彼が女と暮らしている、つまり女を抱いているという話は、おばさんにとって〝可愛い息子を傷物にされた〟という話になるはずだ。
彼の童貞を奪ったのがこの私であることは、口が裂けても言わないでおこうと思う。
「でも、あのヤスくんが選んだ人なんだから、きっとすごく魅力的な人なんだと思うの」
私は〝幼馴染として康宏を心配している〟という体で、しかし内心は〝しめしめ〟と思いながら語る。
程よく女や康宏を庇うことで、自分が康宏を思う気持ちの純粋さを印象付けることも忘れない。
これでおばさんが康宏を心配する気持ちは10倍増しになったはずだ。
ここまでが、私の作戦の第一段階である。
第二段階に入るべく、私は次のセリフを発する。
「だからね、私、その人がどんな人か、確かめようと思うんだ」
私の言葉に、おばさんは目を丸くした。
「確かめるって、どうやって?」
「実際に会ってみるの。そして本当に悪い人だったら、別れるよう説得する」
「そんなこと、できるのかしら」
大胆な作戦だが、おばさんは前のめりで聞き入っている。
もしかしたら引かれるかもしれないと思っていたけれど、乗り気のようで安心した。
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