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それから三年後。
「……やられた」
私は電話を切るなりそう呟いた。
絶望的な気持ちで深くため息をつく。
そもそもは物心がついた頃からの幼馴染である康宏に、翌週からのゴールデンウィークをどう過ごすのか尋ねるために電話をかけたはずだった。
大学卒業以来、彼とは一年以上一度も顔を合わせていなかったので、この連休で実家に帰るなら会わないかと提案するつもりだったのだ。
しかし、その提案はできなかった。
正確にいうと、連休中、彼の実家で会うことにはなった。
彼の方からそう提案してきたのだ。
『今年は希美(のぞみ)さんも連れて実家に帰るし、兄ちゃんと姉ちゃんも来るんだよ。うちの両親が夜は郁美んとこのおじさんとおばさんも呼ぶって言ってるけど、郁美も来る?』
康宏が早くもあの女と結婚することになったのだということは、彼の言葉からすぐにわかった。
三年前に彼の母親と共謀してまで決行した作戦は、失敗に終わった。
私はいろいろと頑張ってみたのだが、別れるどころかふたりの絆が深まっていくばかりだった。
〝雨降って地固まる〟なんて言うが、私はその雨にしかならなかった。
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