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その腹いせに、私はおばさんに散々あの女の悪口を吹き込んだ。
しかし、それすら逆効果になってしまったのだから余計に悔しさが募る。
『彼女が母さんと上手くやれるか不安だったんだけど、郁美が彼女を悪く言ってくれたおかげで、母さんの中の彼女に対するハードルがすげー下がってたみたいでさ。年末の顔合わせの時、すぐにちゃんとした人だとわかって、あっさり仲よくなってたよ。なんか、逆にありがとう』
などと、逆に感謝されてしまう始末だ。
三年前の私がバカみたいである。
私は立ち上がり、勢いよくクローゼットを開けた。
気に入っている上質なワンピース群の中からいちばん高かったものをチョイスし、それに合うアクセサリーを念入りに選ぶ。
彼の妻になるであろうあの年上女に負けたくないから、少しでも自分をいい状態に仕上げたい。
康宏に私を選ばなかったことを後悔させてやりたい。
そう意気込み、私は頭の中で新たな作戦を練る。
きっとまた逆効果になるのだろうが、私はまだ戦うことをやめるつもりはない。
私はまだ、負けたとは決まっていないのだから。
fin.
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