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ダイニングへ移動し、テーブルに着く。
私が手土産に持ってきたシュークリームを手渡すと、おばさんが「一緒に食べましょう」と、美味しい紅茶を淹れてくれた。
「おばさんの紅茶って、いつ飲んでも最高」
私が至福のため息をつきながらそう告げると、おばさんはとても嬉しそうに笑う。
「うふふ。今日の茶葉はとっておきのマリアージュフレールなの」
休日の午前10時過ぎなのに、今家には私とおばさんしかいない。
康宏の兄と姉は旅行好きでこの時期は帰らず、おじさんは早朝から仲間と趣味のツーリングに出かけてしまったらしい。
私の作戦を実行するには、申し分ないシチュエーションだ。
「ねえ、おばさん」
おしゃべりに花を咲かせながらシュークリームをひとつずつ食べ終わった頃、私は神妙な雰囲気を醸し出して呼びかけた。
「なぁに?」
「ヤスくんのことなんだけど……」
おばさんは康宏のことというだけでも食いつきがいいが、言いにくい感じを演出すると、なお真剣に私の言葉を聞いてくれる。
「うん」
「たぶん、なんだけど……今、悪い女の人と付き合ってるみたいなの」
そう告げた瞬間、おばさんの笑顔が凍りつく。
おばさんは昔から、康宏が連れてくる私以外の女に向ける目が厳しい。
「悪い女の人?」
「うん。ヤスくんは本気みたいなんだけど、その女の人、他に彼氏がいるらしくて」
「つまり、ヤスを騙してるってこと?」
「ううん、そういうわけじゃないみたい。ヤスくんもそのことは知ってるし。それでも一緒にいたいからって、マンションに連れ込んで一緒に暮らしてるみたい」
「一緒に暮らしてる……?」
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