不愉快なモーニングMiss

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不愉快なモーニングMiss

「……やられた」 私、村川郁美(むらかわいくみ)は電話を切るなりそう呟いた。 絶望的な気持ちで深くため息をつく。 そもそもは物心ついた頃からの幼馴染である光浦康宏(みつうらやすひろ)を起こすために、毎朝恒例のモーニングコールをしたはずだった。 ただ、今日は急遽早朝からバイトが入ってしまい、いつもの時間では都合が悪くて休憩中に電話をかけたのだが、致し方ないとはいえそれがよくなかった。 康宏は電話に出なかった。正確にいうと、通話状態にはなった。 おそらくスマートフォンが鳴ったのをアラームの音と勘違いして操作したのだろう。 通話状態にはなったが、それに気づいていない様子だった。 応答の代わりに聞かされたのが、康宏とどこの馬の骨ともわからない女との、生々しい愛の営みの音声である。 まったく朝っぱらからお盛んなことだ。 康宏がその女に本気であることは、音声からすぐにわかった。 彼は、特に思い入れのない相手との営みのときは甘い言葉のみをかける傾向にある。 しかし相手を愛している場合、意地悪になる。 電話から聞こえた康宏の態度は、十五年以上に及ぶ付き合いの中でも聞いたことがないほどに甘く、とびきり意地悪だった。 なぜ私がこんなことを知っているかというと、私は彼とそのような行為に及んだことが何度もあるし、一時は彼に愛されていたからだ。 電話でこの音声を聞いてしまった私は、彼との関係がとっくに〝過去〟になってしまっていることを、認めざるを得ない。
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