ユメヨミ記

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伯父に、伯母に新しい靴を買って貰った礼を云うと、「それなら僕はもっと佳い物を買ってやろう」と、云って、温かな上着を買って呉れた。去年からの物があるからと、断ろうとしたけれども駄目であった。寸法は変わらないのだ。勿体無いことなのだ。 ◇ 時おりこの世の何もかもが煩わしくて、悪いものも、善いものも、一緒くたに壊してみたくなる。私には人外の心がある。先生はきっと、そのことを透視しているに違いない。だから私を、招くことなく自分の元へ呼び寄せたのだろう。 ◇ 先生が(何故か)書庫の片隅にあった私の昔の画帖を見附ける。 「ヨミヒコ君は、もう、絵を描かないのかい」と、訊ねられて、はいと、答える。 「どうしてだい」。 「才能がないからです」と、答えた途端に頬が熱くなって、それ以上は何も云えなかった。
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