ユメヨミ記

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墓参り。珍しく早く帰ってきた兄と連れ立って行く。お互いほとんど何も喋らなかった。帰りに「何か食べていくか」と云われたけれど、頸を横に振って断った。兄は更に云った。「誕生日だろう、ヨミ君」。私は誕生日を棄てたのだ。兄も忘れてしまえば良いのに。 ◇ 頼まれて買い物に行くと、お駄賃だと云って、先生は庭の花を切って私に呉れた。私が、「先生、これは作為ですよ」と云うと、朗らか笑って、「君も私も素直でないね、ヨミヒコ君」と、云われた。先生は私の新しい歳の数だけ花を呉れた。 ◇ 先生の家はいつ行っても間取りがオカシイ。部屋の数が毎度異なるのだ。もう何年もこの家に出入りしているけれど、正確な部屋数はいまだに不明だ。先生に訊ねると、先生も識らないのだと云って、笑った。
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