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「本当に美味しそうに飲むよね……」
でも、もう一本いこうとすると、慶松に取り上げられた。
「これ以上飲むと、眠ってしまうでしょ。今日は、土曜日。俺は、一週間待った」
何を待っていたのか、聞きたくはないが、察してはいる。
「氷花。今日は、氷花の部屋の和室にしようかな……」
いいや、慶松のベッドの方がいい。慶松のベッドの下には、かなりのグッズが揃っている。俺の部屋には、殆どない。
「……分かりました。でも、その前に、本当に設計したから、少し見て欲しいかな」
二階に移動すると、作業部屋に入る。そこの端末で、信哉の車椅子の第二弾を見せてみた。
車椅子は、結構段差に弱い。このくらい大丈夫だろうという段差で、動けなくなってしまう。そこで電動にしたいところであるが、今度はバッテリーで重くなる。
「タイヤをキャタピラーにしてみた」
「月面でも走るつもり?」
月面で走る事が可能ならば、地上でも大丈夫なのではないのか。
でも、基本的には信哉が立って歩くための補助であった。杖も用意してみたが、一時的ではなく、ずっと支えるとすると松葉杖のような形状になってしまう。でも、それでは今度は体のバランスが崩れて、関係の無い関節や内臓なども痛くなる。中心線がずれないような杖を希望してしまう。
「これは、足に装着してしまうもの。腰から足にかけて、補助する」
両足にセットして、主に動く時の補佐をする。他に、ストップがあり、急に曲がらないように調節できる。
「案外、浅見さんを気に入ったみたいだね」
浅見を気に入ったのではない。強いて言えば、信哉と気が合った。両親の思ったとおり、どこか、俺と信哉が似ている部分がある。
「気に入ったというのかな……俺を呼んでいる気がしたよ」
そこで、妬けると言いつつ、慶松が俺を後ろから抱き込んでいた。
「この頭も、腕も腰も、俺のなのにね……独占できないのが、辛いよね……」
逃げると捕まえられるので、そのまま慶松に凭れ掛かってみた。すると、慶松は俺を更に抱き込む。
「俺の両親が、信哉に握り飯を渡した。これって、凄い偶然だよね……」
俺のルーツは親になる。田舎で、米を作っている。食べ物は、自然を見ながら育てるものだと、俺は身に染みて分かっている。嵐が来ると、田が心配になる。
「ああ、少し分かった……」
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