『0(ZERO)SYSTEM』

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「これも、盗撮に使われそうな感じがするよね……」  自社の製品が犯罪に使用されると、マイナスイメージも大きい。 「そうだね……」  それでは、最後にやはり組み込みパーツではないが、商品を持ってきていた。 「電動カート」  これは、老人のアシスト目的のシニアカーであるが、電動アシストを付けたものであった。少しの段差に躓いているのを見かけ、押すのを手伝ったのがきっかけであった。 「手が離れると自動で止まる。スイッチは手元のボタン」 「まあ、こういう提案はいいかもね」  手元のボタンと、充電器、モーター、そしてキャスターのセットであった。これを組み込むだけで、アシスト機能がつく。 「それに、どうせ充電だからさ。まさかの時の位置判明機能付」  ついでの機能も付けてみた。 「うん。手持ちに、作っている企業があるから、行ってみるかな」  柴田が、ほんの少し乗り気になっていた。  しかし、そこで、再び浅見の話題になってしまった。浅見の家柄は良く、秘書課でもクビにはできない人物であった。そこで、企画課という、問題児の集団に預けられたらしい。 「問題児ですか……」  さっくりと柴田は言ったが、そこに自分だけは含まれていないと、企画課のメンバーは思うだろう。でも、問題児という括りが正しいのか分からないが、企画課は特異な仕事能力を持っているという事は、確かであった。  淡谷は、川越の補佐に徹し守っていたが、最後に自分の生まれてくる子供を取った。でも、川越は淡谷が結婚したことを、手放しで喜んでいた。川越には、そういった面での、影がない。例え社長を自分の体を餌に窘め、導いていたとしても、会社や家族という他者のためであり、自分の利益のためではない。そのせいなのか、心に闇を持たない。  先輩の温科は、アニメなどのフィギュアを集めるのが趣味で、人形にも詳しい。しかし、惚れていた淡谷が、妊娠して産みたいと相談した時に、その子供毎愛し結婚するという選択をした。温科には、懐の大きさがあった。しかも、俺には理解できないが、淡谷の子供で、自分の血を引かない女の子かもしれないという点で、温科は浮かれきっていた。既に、美少女と決めている節もある。温科に、男の子だったらどうするのですかと聞いたら、笑顔でそれならば一緒にアニメを見ると言われた。どちらにしても、問題がないようだ。
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