第一章 欠けた月

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 温科は浅見のスルーを全く気にせず、淡谷との新居に心躍らせていた。 もうすぐ、温科は淡谷と結婚するのだそうだ。 「営業一課に行ってきます」  俺は企画書を持って、営業一課に向かった。 営業一課は、主に部品を扱う部署で、電気部品などを扱っていた。 営業では花形の方で、大口顧客も多い。 「氷花、今度は何の企画をしてきたの」  営業一課に行くと、柴田が声を掛けてきた。 柴田は、昼飯仲間で、たまに一緒に飲みにも行く。 柴田は、B級グルメに詳しく、隠れた名店にも詳しかった。 「浅見さんに、俺、ばい菌みたいに扱われているのよ。 居心地が悪いので、半ば逃げて来た」  営業一課の隅には、ミーティング用のテーブルがあった。 俺は、そのテーブルに資料を広げる。
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