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水溜まりに映った私は、見慣れたいつもの私ではなかった。
私は前世を記憶したまま、違う生物に転生したらしいと言うことを今まさに理解した。
私が読んだことのあるチート無双展開とちょっと違う。
目線の先に映る私は、おそらく微妙な顔をしているのかもしれないのだけれど、イマイチ表情がわからない。
人間って表情豊かだと改めて感じられるほどの判りづらさだ。
そこに映る私の姿は、服を身につけてはいない。色っぽいことなどではなく、必要としない姿だからだ。
落ちた葉っぱや細い枯れ枝が無造作に転がる剥き出しの地面に置かれた小さな手足。
緩やかな浅いカーブを描いた楕円のボディーは、ぽってりとしており毛並みが白銀に輝いている。
振り向けば首筋から滑らかな背を見ることができ、ツンとした短いシッポにつながっていた。
毛並みと同様、白銀のピンと張りだしたヒゲに、丸く薄い耳とキュートな紅桃色の口。
つぶらな瞳は黒目でくりくりと丸い。
誰がどう見てもハムスターでしょう?!コレ!!
この世界でどういった存在なのか知らないが、前世ではネズミ目齧歯類に分類されるであろう生物だった。
神も女神も対面なし。
説明もなし。
前世に関する人間関係の記憶は曖昧だし。
神も仏もない世界か?
価値観や現代知識は偏っているけれど、その記憶があるのはなんで?
ある知識から引っ張り出せるひとつが、野生のハムスターの寿命が12ヶ月だということ。
…………………。
短命っ!思った以上に人生…いや、ネズミ生短いよっ!
所詮こんなちっぽけなハムスターが右往左往したところで、どうにも変わらないのだけれど、ところで私はこれからどうすればいいの?
まずは、そこからだった!
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