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そろそろ緊張の糸も限界に引き絞られた頃、私が隠れていた葉っぱがペラリと捲られついに予想通りの全貌が姿を現した。
漆黒の鱗をもつ大蛇が目前に迫り、丸い黒曜石のような瞳を輝かせ、横からそれを押し退けるように紅蓮の羽を持つ大鳥は、紅い瞳を燃やし小さな私の視線を独り占めするかのように視界に広がった。
あ、これ終わったな……と。魂の抜けかけた私は一瞬カラダを硬直させたが、混乱したときの行動って自分でも予想外だったりする。
「きゅきゅきゅっ!きゅきゅっ?きゅー……(こここここ、こ、こんにちはっ!あれれっ?ダメじゃん……)」
挨拶でもと思いつつ、口からでるのはネズミが鳴くようなちゅーともきゅーとも聴こえる音だけ。
日本語を発声出来る声帯ではないのだろう。
大蛇相手に私も何を言っているのかわからないし、伝わっているのかも不明だ。
<<お迎えに上がりました……異世界の勇者様>>
頭の中に直接流れる音なき声。映画などで日本語の字幕が、頭の中に流れ込んでくる感覚だ。
私の挨拶を生ぬるい目で見てから、恭しく頭を下げた大蛇と大鳥に、呆けた表情で見つめる私。
…………ハムスターに向かって勇者…だって?
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