退屈なモーニングCoffee

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すると光浦は口角を上げ、クールだった表情を妖しく歪めた。 彼がまとっていた雰囲気が、俄然がらりと変わる。 「ざまあみろってところですかね」 「え?」 なんだ? 聞き違いか? 「聞こえませんでしたか? 〝ざまあみろ〟と申し上げたんです」 「ざまあみろって……」 こんな言葉を面と向かって相手に言える人間がいるとは驚いた。 ざまあみろだなんて言われたのは初めてで、どう返していいかわからない。 マンガなどで悪役の捨てゼリフとして使われているのを読んだことはあるが、有効な返し方の手本になるようなシーンはひとつも思い出せない。 たじろぐ俺を堂々と見据えている光浦は、不敵な笑みを浮かべたまま喋りだす。 「須山先生は、あなたがデトロイトに発ってから自身が橘校に異動になるまで、ずっとあなたのことを思い続けていたんですよ。帰国されて、今まだ半年ですか。彼女は一年あなたを思って辛い思いをしたんですから、あなたにもあと半年は苦しんでいただかないと、イーブンにはなりませんね」 「え、ちょっと待て。なに急に」 ちょっと感傷的になっていたのもあって、急な攻撃転換に思考が追いつかない。 彼は畳み掛けるように続ける。 「別に、急にってことはないでしょう? 私はあなたが須山先生を解放してくださったことについて感謝していますが、彼女を深く傷つけ惑わせたことに対しては、ずっと憤りを感じていました」 謹厳たる言葉で、声を荒げることなく、顔には笑顔を浮かべている。 それなのにしっかり怒りが伝わってくるのだから不気味だ。 よく〝美人が怒ると怖い〟なんて言われるが、男にも通用する真理なのかもしれない。
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