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数日後、会社の個人メールに【コーヒー】という奇妙なタイトルのメールが届いた。
送信元は橘校のアドレスだ。
そこでようやく差出人が光浦であることに気づく。
タイトルをクリックしてメールを開くと、実に素っ気ない簡素な箇条書きが二文表示された。
*****
・豆は深煎りのマンデリン(普通のペーパードリップ用より少し細かめに挽く)
・横井先生のカップ1杯につき、メジャーカップ軽く2杯
*****
親切にも、光浦が希美から聞き出してくれたらしい。
「なるほど、豆から違ったのか」
メールを読むなり、会社にもかかわらずつい口に出してしまった。
コーヒー豆の種類などどれも似たり寄ったりで同じだと思っていたし、挽き方は店員の言いなりだったから、豆の量さえ調整すればあの味が出せると思っていた。
それがまったくの見当違いだったようだ。
翌日、出勤前にコーヒーショップへ立ち寄り、深煎りのマンデリンを入手した。
「ペーパードリップ用でよろしいですか?」
という問いに
「少し細かめにしてもらえますか」
とオーダーすることも忘れなかった。バッチリだ。
そしてその翌日の朝、入手した豆をスプーン型のメジャーカップに2杯入れ、コーヒーメーカーにセット。
ドリップが始まると、スーパーで適当に選んだ豆の時とは違う、懐かしい香りが漂ってきた。
そうそう、この香り。
これは期待できそうだ、と心を躍らせる。
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