6.

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*** 梨那さんが作ってくれた夕飯を食べた。メインディッシュはボルシチで、それに入れるサワークリームを頼み忘れたと言っていた、一人買いに行ったのはそれだったんだ。「なくてもいいんだけど」と笑っていた。 食べ終わると早々に千紘は梨那さんを送って行った。 一時間ほどで帰宅する。 「ただいま」 声は不機嫌だ、まだ佐々木の事、怒ってるのかな? 「おかえり」 俺はリビングのソファーでビールを飲みながら出迎えた、目が合った千紘はやっぱりムッとしている。 「アキ」 千紘は仁王立ちで腕組で横柄に聞いた、俺はソファーに座ったままその姿を見る。 「ん?」 「なんで佐々木とキスなんか」 「不可抗力だって言ったろ。あんないきなり」 「俺とだって、街中なんかじゃしないのに」 「しないの、普通はしないの。男と男だからじゃなくって、日本人は街中なんかじゃしないの」 俺もムカついてちょっと声を荒げて言った、そんな事で怒られたくない。 「部屋にまで上げやがって」 「あんなとこで喧嘩始めたら、みんな見てただろ、どう見ても痴話喧嘩を。いい晒し者だ」 「だからって、あんな男」 「俺は千紘がいいって言った! 千紘だから好きだって言った!」 自棄になって言う、千紘はにやりと笑って俺の隣に座る。 「聞こえなかった、もう一回」 「聞こえてない事ないだろ! 今までだって言ってるし!」 「あいつより俺がいいって言え」 「当たり前の事聞くな!」 「当たり前だからって言わないでいると、伝わらないんだぞ。ちゃんと言えよ」 細い滑らかな指で頬を撫でられた、ああ、ずるい、そんな優しい撫で方は、卑怯……。 「……他の男じゃ駄目だ、千紘がいい。千紘が好きだ」 「もう一回」 「千紘が好きだ」 「もう一回」 「千紘が……」 その言葉はキスで塞がれた。 「……好き」 唇が離れた隙に言った、その口を再度塞がれる。 濃厚なキス、あっと言う間に溶かされた。 「……酒臭い」 千紘が呟く。 「じゃあ、やめろよ……」 俺が力なく言うと、千紘はにやりと笑う。 「やめる訳ないじゃん、一瞬でも浮気したアキにお仕置きしないとだろ」 「う、浮気なんか……!」 な、なんでバレてる……!?
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