6.

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「千紘、いいからお前はもう戻れ……」 「なんで嘘ついたんすかー。それって俺に気を持たせようって言う心遣いー?」 「違う!」 「アキ! 早く離れろ! ムカツク!」 「え、ああ……」 慌てて腕を解こうとするとそれはあっさり離れた、そしてその手は俺の頬を包むように捉え向きを変えさせられると、キスをされた。 一瞬、周囲を歩く人々の足が、止まった気がした。 「──アぁキぃ……」 低い声がする。 「や、これは不可抗力だろ……佐々木!」 「何度もした仲でしょ」 「してない!」 嘘はついてない、何度もは、していない。 「後輩だかなんだか知りませんが!!!」 千紘は片腕で俺を抱き寄せた、もう一方の手にはレジ袋が三つも下がっている。 「これはもう俺のもんなんです! 手出し無用でお願いします!!!」 がっしりと抱き締められた、やばい、嬉しい。 「えー先輩ぃ。絶対俺の方がひいひい言わせてあげられますって」 「いや、それは嬉しくないから」 「アキはもう十分ひいひい言ってるから!」 「千紘、お前は黙ってろ……」 俺を挟んで二人は言い合いを始めた、通行人が何の騒ぎだと見ている、恥ずかしい事この上ない。 と、そこへ。 「あれ、やだ、いた、千紘」 可愛い声がした、エプロン姿の梨那さんだ。     
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