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駐車場に辿りつく頃
後ろから烈火のような足音が聞こえてきた。
あの人が焦ってる。
僕には手に取るように分かった。
そしてそれが快感だった。
九条さんは僕を助手席に押し込むと
そそくさと運転席に回り込んだ。
「――シートベルトを」
言う間もなく
助手席のベルトを引っ張り出し
僕の身体をきつく縛りつける。
「っ……」
椅子に拘束された僕を見て
彼の中でも何かが弾けたようだった。
エンジンをかけると同時
汗だくの征司がポルシェのバンパーを叩いた。
助手席の僕に向かって怒鳴り声を上げるけど
その声はもう聞こえない。
九条敬はアクセルを踏み込んだ。
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