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昼休みの音楽室に軽音楽部の仲良し3人組が集まっていた。
「今日はどうして遅刻したの?」
ピアノの前の安奈が編んだ長い髪を背中に揺らす幸田朋美にきいた。背の高い朋美は、安奈が羨む存在だった。
「地下鉄に乗ったらさ、ちょうどいいカモを見つけたのよ」
朋美は手にしたギターでFのコードを鳴らした。
「まさか、失敗したの?」
いつもおっとりした篠田麻友が、珍しく弾かれたようにきいた。
「そんな、ドジを踏むはずないでしょ。うまくいきすぎたのよ。見せたかったなぁ。私の名演技」
「へー。朋美にはめられたのは2人目ね」
「そうね。安奈の足元にも及ばないけど」
朋美は安奈に向かってギターを鳴らす。Cコードが微笑んだ。
「私だって、この前は大変だったのよ。帰りの電車で7人に声をかけてさ。7人目が品の良さそうなオジサンだったのよ。オジサン、子供は趣味じゃないなんて言うから、はめてやったわけ。そうしたら線路に飛び降りてさ」
「最近、線路を逃げるやつが多いわね」
「そういえば、防犯カメラの動画が流されたやつ。安奈がはめたオヤジだったわよね。昨日までさぼったから分からなかったぁ」麻友がいう。
「メッセージ送ったわよ」
「うん。返事できなくてゴメン。スマホ、親に取り上げられちゃってさぁ。成績悪いから。……それでストライキして、やっと今朝になって取り戻したわけ」
麻友はスマホを出して見せた。
「そういや、麻友、成績落ちたよね」
「あぁー、それ言わないでぇ」
麻友が頭を抱えて振るので、安奈と朋美は笑った。
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