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1時間ほど満員電車に揺られ、電車から降りたころには江元はくたくたになっていた。それでもすし詰め状態から解放された安堵感で生き返った心地がする。
駅周辺はマンションが林立している。
江元は10分ほど歩いてマンションにたどり着いた。
「お帰りなさい。お疲れのようですね」
キッチンに立った妻の彩加(さやか)が背中で迎えた。
「ああ、地下鉄が止まってね。あれは痴漢だろうな。……30分も足止めを食らった。線路に降りて逃げたというのだから、驚きだよ。地下鉄トンネルのどこから逃げ出すつもりなのだろうな」
ネクタイを取り、靴下を脱ぐとドタッと椅子に腰を落とす。
「そんなことより、この成績見てくださいよ」
彩加は娘の中間テストの結果表を夫の前に突き出した。
妻にとっては線路を逃げた人間の生き死にや夫の苦労より、娘の成績が大切なのだと失望しながら成績表に眼を落とした。
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