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娘の安奈は都心の名門私立高校に通っている。家計は楽ではないが、一人娘の将来を願って中学からそこに進学させたのだ。
「120人中69番なら、中間じゃないか」
「真ん中より下ですよ。音楽ばかりやっているから」
「部活動だ。悪くはないだろう」
「お茶の水に入ってもらわないと、私立に入れた意味がありませんよ。最近は伝説を作るんだなんていって、友達と遊んでばかりいるんです」
彩加はお茶の水女子大学の出身で、娘もそこに入れたいと考えている。
江元は、自分の様な教師の妻になるだけなら大学がどこでもいいではないかと思うのだが、それをいうと妻が怒り出すので黙っていた。
「伝説って、なんだ?」
「知りませんよ。安奈が帰ったら、注意してやってくださいね」
「彩加が言えばいいだろう」
「あの子、私の言うことなんて聞かないんですよ」
「成績より、そっちの方が問題だろう?」
「どっちも問題なんです」
言いながら、乱暴に食器を並べた。
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