あなたへ

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 お久しぶりです。  いかがお過ごしでしょうか。  あなたが会社を去ってから、早いもので半年が経ちました。  吹き付ける風は、裸の木々と透明な空を凍らせるような冷たさでしたが、最近では、太陽と一緒にじりじりと肌を焦がすような強烈な暑さです。  時折、ご機嫌を取るかのように、ふっとミントのような爽快さを連れてきます。  会社の心配はいりません。  あなたは、去り際にずいぶんと気にしておられましたね。  自分が抜けてしまったことによって、その空洞が、円滑に運んでいたはずのすべての物事に支障をきたすのではないかと。  途中で唐突にコマをひとつ引き抜いた、ドミノ倒しのように。  レールの先が突如として崩落してしまった、特急列車のように。
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