第一章 幽霊の幽子(通称)

10/28
前へ
/90ページ
次へ
「いや、それは聞いてない・・・・」 「なにやってんだか」 麗子は気が抜けたような顔をしたが、興味はまだ失せてはいないようで、「あの世にいって貴女は何人の霊と遭遇したの?」と聞いてきた。 幽子はこれまでの霊生をしみじみと回想した。 何人と言われてもなあ・・・・ 生きてる時から余り生真面目なほうではなかったし、それは死んでからでも変わるものでもなかったし、だから・・・・何人だったろうか。全く思い出せないけど、大まかには100人まではいかないくらいだったんじゃないかな。 意外だけど、あっちこっちに霊がいるなんてないんだよねえ。日本が出来てから死んだ人が何人いるか知らないけど、生きてる人間より遥かに多いことくらい誰だって分かる。だけど、実際にはなかなか出会いなんてなかったし、霊能者って本当に少ないのだというのだけは理解出来たなあ。 あ、それと、白装束の幽霊は見たこと無い。みんな死んだと思われる時の格好をしてる。そういう自分だってモガの格好のままだから、それは間違いないと思うな。   麗子は「確かに白装束の霊は見たことないんだよなあ」と納得した。 「それからさあ、一度会ったっきりのままの幽霊もいるけど、それって成仏したってことかなあ?」 幽子がそんなことを言うと、麗子は 「そうだよね。それなんだよねえ・・・・」 と言った。 何が「それなんだよねえ」なのか幽子は解りかねて、「何が?」と聞き返すと、麗子は隣を横目で指しながら言った。 「実は、今からこの子の家へ行くんだよね。で、この子が言うには悪霊が住み着いてるって言う訳。余りにも真剣にお願いしてくるから、それだったら行ってみようかって事で浄霊しにいくんだけどさ。浄霊が必要な悪霊なんてこれまで見たことないし、不安なんだよねえ」
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加