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「それって、浄霊をすること自体、初めてってことだよね?」
「そうだよ」
「そうだよって・・・・」
「だって可哀想なんだよ、この子。毎日毎日悪霊に脅かされて、そりゃー怖いんだってさ。普通、そんな話を聞いたら助けてあげたくなるでしょ?」
「まあ・・・・うん」
本心では余り関わりたくないけどね。
ここで麗子の表情が変わった。何かを思い付いたらしい。
「良い考えがあるよ」
「何よ? 悪い考えだったら言わないでね」
幽子は嫌な予感がした。この予感が当たらなければいいと本気で思った。
「一緒に行こうよ」
ほら来た。
麗子は凄く嬉しそうな顔をしている。
「あのさあ、どうして私が行くのさ?私が行く理由なんて何もないじゃん」
「あるよ」
麗子はまだニコニコとしている。
「あ?何?」
「一人より・・・・二人の方が二倍強いから」
「はあ?」
「それに、どうせもう死人なんだからこれ以上は死なないでしょ?だったら怖くも何ともないじゃない。まさか、死んでるくせにビビってるんじゃないの? はあ、情けない・・・・・・」
麗子はそう言うと、深い溜息をつきながら馬鹿にするような上目遣いで私を見ている。おいおいおい、その目は止めてよ。悔しい。何か悔しいからさ。たかだか人間のくせに幽霊を完全になめているとしか思えない。よーし、分かった。じゃあ、私の目の前でキッチリと浄霊してみなよ。
「じょ、上等だよ。行ってやろうじゃない。その時になって泣きべそかいて逃げ出さないでよね。ダサいから」
「大丈夫よ。あんたじゃないからさ」
「くっ」
そんなやり取りをしている内に、隣の女が口を開いた。
「次で降りるから」
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