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「ここ?」
麗子が疑わしいようなニュアンスの言い方をした。
「そうだけど?」
「いや、なんかもっとこう・・・・」
麗子の気を遣うような曖昧な返事を聞いて美鈴は思わずクスッと笑った。
「幽霊屋敷みたいな家だと想像してたんでしょ?」
「うん。まあ、そんな感じ」
麗子は照れるような仕草で答えながらも、遠目から家の外観をじっくりと観察した。
家は今風よりも少し古い一昔前のこじんまりした日本家屋で、東京の下町や京都の路地裏で目にするような、そんな感じの二階建てであった。
「麗子、そんなことはいいからさっさと中に入ろうよ」
家を前にぐずぐずしているのが気に入らないのか、幽子が急かすように言ってきた。
二人と一人は、狭過ぎる歩道が付いた片側一車線の古い道路を横切ると、美鈴は麗子に「宜しくお願いします」と言った。麗子は、軽い調子で「任せて」と美鈴の左肩を右手でポンと叩くと、美鈴は「じゃあ、開けます」と言いながらドアの施錠を外した。
麗子は幽子に目で合図した。それに気付いた美鈴が「何?」と言ったが、麗子は「いや、何でも」と言った。
美鈴は、不思議そうな顔をしたが「そう?」と言うとドアを開いた。そして、「どうぞ」と言って麗子を招き入れた。勿論、幽子も一緒に入ったことは言うまでもないが。
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