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短い廊下を進むと突き当たりが台所になっていた。
美鈴が左側の柱のスイッチを押すと、僅かばかりのパチンという音がして天井の照明が辺りを照らした。
天井の照明は玄関と同じような蛍光灯で、傘の形だけが丸く違っていた。傘の色は赤だった。
玄関よりもマシな明るさに麗子は心なしかの安堵感を覚えた気がして、さっきと同様に辺りを観察するようにじっくりと見渡した。
正方形のテーブルがあるが食事をするには余りにも小さい。
「呻き声がするというのはここ?」
美鈴がコクリと頷いた。
「ふーん」
「何かいる?」
「いや、何もいないけど」
「どうして、どうしてよ?」
「どうしてって言われても居ないものは居ないし。逆に聞くけど、本当なの?」
美鈴が目を丸くして口をアングリとしたままでフリーズした。
「ねえ、本当に呻き声がしたの?」
麗子がしつこく聞いた。
フリーズから我に戻った美鈴が顔をこわばらせながら紅潮しているのがあらかさまに解る。
「何を言いたいのよ。えっ?」
美鈴が怒鳴った。
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