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「また思い出し笑いするかもしれないけど、今度は気にしないでいいからね」
顔の地味な女が笑みを浮かべながら隣の女に言い聞かせていた。隣の女は「分かった」と言った。
素直な女だった。
幽子は素直な女の顔を見つめたが、目が合うことは一切なかった。
「なるほどね」
幽子がそう言うと、
「そういうことだよ」
と、地味な顔の女は言った。
「あんた、さっきのバス停で立ってた時にはもう気付いてたの?」
「まあね。でも、たまに幽霊さんとは遭遇するし、いちいち驚いてたら周りの人に悪いでしょ?」
見える人って、そんなもんなのかな。私は出る方だし、基本誰にも見えないと思ってるから周りの事なんか気にしたこと無いけどね。
「あんた、見た目に拠らず優しいところもあるじゃん」
「あ、でも幽霊は好きじゃないよ。自己中ばっかりだからね。ところで・・・・」
そして続け様に「貴女の命日はいつ?」と聞いてきた。
なかなかぶっきらぼうと言うか、真っ直ぐな質問の仕方である。幽子は、回りくどく勿体つけてグジグジいう奴よりは幾分か好ましいと思った。まあ、だからと言って褒めてる訳でもないし、ほんのそこだけなんだけどね。
さて、私の命日か・・・・
もう随分前の話だからなあ。正確に覚えているかどうか。
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