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私は幽霊よ。本物の幽霊。幽霊って普通は怖いもの。それが常識だよね。井戸から出たり、テレビ画面から這いつくばって出てきたり。ほら、恐怖で悲鳴を上げたくなるでしょ?
それが普通なの。
なのに、怖くないということは、既に私と友達的な関係になっているということ? それとも、まさか私があんたになめられているとでもいうの?
だとしたら、「の、呪い殺してやろうか?」と、また言い出しそうになったが、これは何とか口から出る直前に飲み込んでセーフ。胸を撫でおろした。
「なに安堵した顔をしてるの?」
唐突の指摘に幽子はポッと赤面した。変な考えを見透かされたと思った。そして、被っていた薄茶色の「クロッチェ」で素早く顔を覆うと、「モダンガールだからーー」などと訳が分からないことを言って誤魔化そうとした。
「モダンガールねえ・・・・そんなに何回も推されると不思議と流行になりそうな気がしてくるから可笑しなものよねえ。確かに、今の銀座にも似合うかも」
そう言われて幽子はクロッチェの端から顔を覗かせてニコリと笑った。
顔の地味な女は、「可愛い奴だ」と思った。
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