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これは山陰地方へ出張にいった時のお話。
自分の住んでいる所からは、新幹線だけでなく、電車やバスを乗り継ぎ、半日かけてやっとたどり着ける得意先。
正直、移動だけでも疲れてしまうので、この得意先に来るときの移動日は、到着したら一人で軽く呑んで、さっさと寝ることにしているのだが、ある時、たまたま同じ得意先で仕事をする他社メーカーの担当者と駅でバッタリ遭遇し、一緒に呑むことになった。
違う会社の人間と話すことと言ったら、業界や景気の話が殆ど。
けれど、互いに出張が多いので、行く先々の土地柄やグルメといったものや、宿泊先に関する情報もよく話す。
何で宿泊先の話をするのかと思われるかもしれないけれど、これが結構大事なこと。
某ホテルは高くて汚いとか、某ホテルは安いし無料朝食付きだとか、なるべく安い経費で小奇麗なホテルに泊まる為には必要不可欠な情報だったりするんだが、それだけではない。
霊感の無い人であっても、絶対に心霊体験をしてしまうというホテルというものが、日本各地に何箇所かある。
いわくつきのホテルには泊まりたくないというのが人間の心理であり、そういったホテルを避けるためにも大切なのである。
「つい最近。金縛りにあってさ……」
彼が話し出したのは、関東地方の新しく出来たビジネスホテルに泊まった時、髪の毛の長い幽霊に襲われたというもの。
その地方は、大昔、戦があって多くの血が流れ、命が散った土地。
心霊現象で有名なホテルが実際に存在しているし、「〇〇市の仕事だけは断る」という人までいるほどの場所。
磁場が悪かったり、土地そのものに何かいわくがあれば、オープンしたてのホテルでも安心は出来ないねと締めくくって、翌日は早朝から仕事ということもあり、お開きにした。
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