蜜柑の月

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「幼馴染だから可愛くない駄目なとこもたくさん知られちゃってるし、多分妹みたいにしか思われてないし……今は無理だよ」 「あぁ、それで」 宙は何か納得したように頷いた。 「中二の頃から、急に僕らの前で自分をよく見せようとしてたの、そのせいか」 「げっ、バレてたの?」 「バレバレ」 彼はそう言い、空になったジュースの容器を近くのゴミ箱に投げた。 容器は綺麗な弧を描きゴミ箱に収まった。 その様子に気づくことなく、恭ちゃんは携帯に向かっている。 恭ちゃんの好きなタイプをリサーチし、それに少しでも近づこうと努力し始めたのが、ちょうど中学二年生の頃だ。 料理が苦手なのを隠してお菓子づくりを趣味にしてみたり、漫画につぎ込む予定だったお小遣いをコスメに回してみたり。 二人の前でも出来るだけ女の子らしく振舞っていた。 ……と、言っても、性格はそんなに簡単に変えられず、一緒に遊ぶうちに素に戻ってしまうんだけど。 「まるで月みたいだと思った」 「月?」 意味が分からず首を傾げる。 「うん。月は綺麗な片面しか地球に見せないから…………もう半分も分かってるつもりだったんだけど」 「え?」 一瞬……一瞬悲しげな表情を見せた宙は、すぐにバカにしたような笑みを浮かべた。
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