蜜柑の月

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「蜜柑は名前と同じで、月みたいにまん丸ってことだよ」 「しっ、失礼な!」 「ほら、愛しの恭平くんが行っちゃうよ」 その言葉に恭ちゃんの方を見ると、駅前の方に歩き出していた。 納得できないが、彼を見失うわけにもいかず慌てて後を追う。 そんな私の後を宙がゆっくりついて来る。 ちらりと彼の顔を見ると、訝しげに眉間にしわを寄せられた。 「なに」 「ううん、なんでもない」 うん、いつもの宙だ。 どこか元気のないように見えたけど、気のせいかもしれない。 不機嫌なように見えても、ちゃんとついてきてくれる。不器用な優しさがなんだかくすぐったかった。
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