君の瞳に映る僕の瞳の中にもきっと君が

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彼女の見詰める一点が僕の視線と重なり、僕は瞠目し一瞬怯んだ。 長い一瞬、僕達は地下鉄の暗い窓越しに……向こう側の闇のせいで鏡状になったガラス越しで僕は彼女と見詰め合っていた。 彼女を見る僕を見ている彼女を見詰める僕。 無限ループのような言葉の羅列。 まるでそれはエッシャーのだまし絵のよう。 まずい!! 慌てて逸らしたが、多分ばれている。 僕の視線が彼女を舐め回していたことを。 緊張が走り、つり革を握る手に自然と力が入る。 手元でギュッっと軋む音。 落ち着け落ち着け落ち着け。 ただ一瞬目が合っただけだ大丈夫。 でも彼女はまだガラス越しに僕を見ている、それが強い視線で伝わってきた。 怒っているのか? 心の中で罵詈雑言を浴びせ尽くしているのだろうか? 早くいつも僕が降りる駅に着いて欲しいと、この時ほど願ったことはない。 ようやく次の駅に到着したが、そこはまだ僕の降りるべき駅ではなかった。 いや、降りるべきか? 今逃げるように降りて、もう明日からは別の車両で……。 それとも無遠慮に見詰めていたことを正直に謝って、あわよくば告白なんて……。 混乱の中で思考が巡る。 ドアがしまるギリギリまで悩んで発車を知らせるベルが鳴ると同時に漸く意を決して彼女の方へとと一歩を踏み出したが、そこで再びバチリと目が合った。 ……!! やっぱりダメだ。 慌てて踵を返し閉まり始めたばかりのドアの隙間を何とか降りた。
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