君の瞳に映る僕の瞳の中にもきっと君が

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地下鉄とは全く別の世界で何の前触れもなく会ってしまうなんて、誰が予想していただろう。 定期で行ける中で一番大きな本屋さん。 そこで目当ての本が見つかり私は嬉々としてその本に手を伸ばす。 ……う、届かない。 だから、ちびは嫌なんだ。背が低くて得したことなんて、せいぜい机の下に落ちた消ゴムが拾いやすかったとか? そんな機会滅多にありませんが!? 不意に私の頭の上を手が飛んだ。 「……これ、ですか?」 そう言って高いところにある本を易々と取ってくれた、その人が彼だった。 「……ありがとう、ございます」 「あ……いえ」 そう言う彼は、耳まで真っ赤だった。 ……それは、どういう意味? そう思った時には既に彼の姿はなく私一人が取り残されていた。 それから家に帰ってからもずっと、彼の赤面と怖い顔とがくるくると忙しなく交互に浮かんでばかりいた。 顔を背けたときに見せたあの赤い耳の意味が知りたくて堪らなかった。
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