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「でも、何で私達が関わってると、
思ったんですか?」
『日曜日のあの後な、
服縞から詐欺で訴えろって、
依頼有ったからさ~。
そん時は断ったけどな。
んで逮捕されたのがその三日後。
昨日依頼が有った時、
最初は青池に対するストーカー行為で、
逮捕されたんだろうなって思ったもん。』
「あ~、なるほど・・・。」
『警察は、誰がヤツらを捕まえたのか?
・・・って事は捜査してないからな、
そのまま自分らの手柄にする気だろう。
だからその辺は安心してて良いぞ、
暴力事件扱いされて、とばっちり食うのが、
嫌だからヤツらを拘束して帰ったんだろ?』
「それも有るんですけど・・・、
けど・・・、本当は・・・、
逃げたんです・・・。
被害者達に何も出来ない自分が・・・、
それが悲しくて・・・。
無力な自分が悔しくて逃げたんです!」
涙がこぼれてた。
あの日からずっと苦しかった。
自分だけ助かったのが・・・、
被害者達に申し訳無い気がして・・・、
後ろめたい気がして・・・、
それでずっと心が苦しかった!
事件に関わらない事で、
被害者達に無関心に成る事で、
・・・自分を守ろうとした。
そんな卑怯な自分が嫌だった・・・。
『ありがとう。』
「えっ?」
『アタシが被害者の代わりに言うよ。
助けてくれてありがとうってな・・・。』
「・・・そんな事、・・・言わないですよ。」
『いや、絶対に言うよ!
お前達がヤツらを捕まえてくれなかったら。
被害者達は今も脅迫されてたし、
毎日を怯えながら暮らしてただろう。
この先、ヤツらの被害者に成る子も居ただろう。
お前達は被害者達を救い、
将来被害者に成る予定だった子も救ったんだ!
胸を張って良いんだ!
良くやってくれた・・・。』
私はすがるような思いで聴いていた。
『九条・・・、お前は無力なんかじゃ無いよ。
これ以上、自分を責めるな!
皆、通りすがりの正義の味方に、
感謝してるんだからな!』
「・・・通りすがりの正義の味方?」
『フッ・・・、らしくて良いだろ?
じゃあ他の正義の味方達にもヨロシクな!』
そう言い残して太刀川弁護士は電話を切った。
窓辺に行きカーテンを開けた。
空は青空で爽やかな陽射しが差し込んで来た。
「通りすがりの正義の味方か・・・。」
そう独りでつぶやく・・・。
少しだけ、心が軽く成った気がした。
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