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ローズはやや躊躇しつつ、慎重に言った。「恐らく、その一人はベクトルかと」
「何だと! 先日奴とは“テラウェーヴタワー”再建事業について話合ったところなのだぞ。そして奴の会社には復興で八百億をやると言ってやったのだ……この二枚舌使いめが!」
フォレストは叫び、神経質そうに親指と人差し指の間で鼻翼を抓み、残りの指で頬を撫でつけた。
ふん、とローズが鼻を鳴らした時、唯一外部と連絡できる電話が鳴った。
一瞬、二人はぎょっとしたが、フォレストは平静を保って、受話器を取り上げた。
「何、姫が奴のところへ向かった? アユームも一緒だと? 馬鹿者、押さえるのだ。奴に会わしてはならん。誰かおらんのか? シビングトン? ああ、彼でいい、すぐに向かわせろ!」
フォレストが話すなか、二秒おきに回線を繋ぐ信号が変わり、そのたびにプツプツというノイズが聞こえた。
「どいつもこいつも、どうして問題ばかり起こすのだ!」とフォレストは悪態をつきながら、受話器を叩きつけるように置いた。
「どうした?」
ローズが心配気な表情でフォレストを見る。
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