【第二部】  第九章  エール国 宮殿

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「ルフェル様……」  センプローニアは気味の悪いアーメットを被せられた剣士の姿を見、思わず息を呑み込んだ。  ただ囚人用アーメットを被せられているだけで、センプローニアにはルフェルがひどい拷問でも受けたように思え、彼の元へ駈け寄ろうとした。  しかし、他の者の目があることを思いだし、彼女は衝動を胸に仕舞った。 「こんなところへ来て、危険では?」  彼らが来るのを感じ取っていたルフェルは、鉄格子の前に直立していた。 「危険なのはお前の方だ。何故、捕らえられた?」ロスコは単刀直入に訊いた。  一瞬、ルフェルはためらった。  何を伝えるべきか?  “抽象界”との戦争は虚像だと言うべきか?   そんなことを言えば、地位がどうあれ、センプローニアもアユームも捕らえられるだろう。
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