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話は30分程前に遡る。
今朝、燈子は上司である大神秋人課長に連れられて、本社ビル最上階にやって来ていた。
課長が通算4回目の『今月のベストプラクティス 社長賞』に選ばれた為、授賞式に同伴して貰えることになったのだ。
初めて入る社長室、燈子は相当浮かれていた。
「わー、大神課長。社長室の絨毯ってフカフカなんですね~」
「こら、みっともない真似をするな」
絨毯の上で足踏みしている燈子を、大神が小声で嗜めていたところに、三鷹社長が現れた。
_____
その後。
授賞式そのものは滞りなく終わり、2人が業務課に戻っていた最中のことだった。
興奮覚めやらぬ燈子は、スタスタ先をいく大神課長の背中を追いかけながら、嬉しそうに話し掛けていた。
「課長、課長!
三鷹社長のお姿、初めて近くで拝見しましたけど、外国の俳優さんみたいに素敵な方ですね~。
ジョニー・○ップとか…えっと…」
「……」
ムッツリと黙り込んだ大神は、返事もせずにスタスタと足を速める。
「あれー、課長、大神課長ったら、待ってくださいよ~」
長さの違う足でチョコマカ追いかけながら、燈子はハタと気がついた。
_あれ、大神さんってば。ナゼに不機嫌?_
そういえば。
このセレモニーの様子が昼、社内LANに配信されるからだろうが、大神課長のスタイルは、髪の毛一本から爪先まで、いつもの5割増でキマッている……
_そういうことか!_
燈子は慌てて付け加えた。
「あ、モチロン、今日の主役は大神課長ですよ?いつもの2倍はセクシーでした。やっぱり若さにはかないませんよね。
今日のネット見たら、社内の女子は課長のトリコ、間違いなし!」
「……そうか?」
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